近ごろ、「発言の切り取り」という言葉の使い方を誤解している人が増えているように感じます。SNSなどを見ていると、「それは切り取りだ!」という投稿をやたらと見かけますが、すべてがそうとは限りません。
本来の「発言の切り取り」とは、発言の一部を文脈から切り離し、発言者の意図をねじ曲げるような引用を指します。
たとえば、こんな発言があったとします。
「少数を犠牲にすることで多数が助かる場合、少数を犠牲にするのは仕方ないという考え方もあるが、それでも私は皆が助かる道を最後まで探したい。」
このうち、「多数を助けるために少数を犠牲にしても仕方ない」という部分だけを抜き出して広めるのは、明らかに発言の切り取りです。本来伝えたい「皆が助かる道を探したい」という意図がすっかり無視され、まるで少数を切り捨てる立場であるかのように受け取られてしまいます。
一方で、発言の一部を取り出すことが、必ずしも「切り取り」になるとは限りません。
たとえば、次のような発言があったとします。
「外国人犯罪が増えてきている。これは大きな問題だ。全ての外国人を強制送還した方がいい。この問題を解決しないと皆さんの安全が守られない。」
この中から「全ての外国人を強制送還すべきだ」という部分を取り上げたとしても、それは切り取りとは言えません。
仮に発言者やその支持者が、「主旨は外国人犯罪の増加に警鐘を鳴らしたかっただけ」と主張しても、「全ての外国人を強制送還すべき」という強硬な提案をしているのは事実です。
これは発言者の明確な主張であり、意図を歪めることなく、むしろその核心を伝えていると言えます。
「切り取り」と言えばどんな失言でも肯定されるわけじゃない――そんな当たり前のことを、ちゃんと理解しておくべきなんじゃないかなと。そんなことを思いながら、つらつらと書いてみました。